物心ついてからカープファンになった私のヒーローは、宮川孝雄でした。
赤ヘル旋風で昭和50年に初優勝するまで、広島はお荷物球団であったので、勝敗を気にしていると、結構辛いものがあります。
そんなことよりも、何か一芸に秀でたものを見出して、密かに愉しむというのが私に芽生えた流儀です。推しのアイドルが売れない時代から応援していたファン心理。少数派に属している方が居心地がいいのは、カープによって育まれたと言っても過言ではありません。
宮川孝雄は、代打というジャンルにおいて、いろんなプロ野球記録を持っています。
通算の起用回数778、通算安打数186、通算打点数118。
不思議な選手で、先発メンバーとして出場すると、あんまり活躍できません。水島新司が描いた初期のあぶさんみたいでした。酒浸りだったとは聞いていませんが。だけど、代打で登場すると打ちまくります。その瞬間だけを切り取ると、球場は大谷翔平がチャンスで打席に立ったような盛り上がりを見せたものです。
彼のもう一つの特徴は、死球による出塁が多かったこと。ほとんど代打での出場なのに、生涯で51個を貰ってますし、シーズンを通じてリーグ一位となったのが二度もあります。そのため「当たり屋」の異名も。相手投手はインコースに投げづらかったと言いますから、それも作戦のうちだったのでしょう。達川光男のスタンスとはちょっと違うけど、系譜は一緒です。
いろんなインタビュー記事で語っていたところによると、ポイントは相手捕手のリードにあったようです。キャッチャーのクセを読み取る傾向と対策です。同じようなことをラミレス監督もNHKの『レジェンドの目撃者』で言ってました。そのために、スコアブックを穴が開くほど眺め続けたと。なるほど、打席に立つ前の準備ですね。それと、試合に入り込む集中力。
各球団の代打成績を調べました。
【球団別代打成績】(ヌルデータ置き場より拝借)
オリ 41打数12安打5打点0本塁打11三振8四死球 打率,293
ハム 55打数16安打15打点3本塁打12三振8四死球 打率,291
中日 132打数36安打18打点1本塁打33三振17四死球 打率,273
千葉 62打数15安打5打点0本塁打21三振6四死球 打率,242
広島 105打数25安打8打点2本塁打21三振8四死球 打率,238
楽天 88打数20安打8打点1本塁打23三振5四死球 打率,227
ヤク 131打数29安打9打点0本塁打48三振18四死球 打率,221
横浜 93打数19安打6打点0本塁打22三振7四死球 打率,204
巨人 116打数23安打9打点3本塁打39三振11四死球 打率,198
阪神 108打数21安打4打点0本塁打37三振12四死球 打率,194
福岡 63打数10安打12打点0本塁打22三振7四死球 打率,159
西武 60打数8安打7打点2本塁打18三振12四死球 打率,133
投手が打席に立つのだから、セ・リーグの方が機会が多いのは当然なんだけど、成績が上なのはパ・リーグだというのは意外でした。もしかしたら、レギュラーの指名打者が調子を落とした時の控えという存在を用意しているからかもしれません。鈴木大地・角中勝也・中村剛也らがそんな感じです。
セ・リーグでは、カープが二番めの成績を残していました。総じて低い数字です。だから、代えれば良いってもんじゃないことが分かります。
そもそも、この役割は、主力打者として活躍してきたベテラン選手にこそ相応しい。多くの投手・捕手のクセや特徴をしっかり把握しているし、場数を踏んでいるので、好機にも余裕をもって打席に立つことができるからです。カープだったら、松山竜平の役どころなんですけどね。
今は中村奨成です。やっぱり、一発があるってのは魅力です。昨夜の試合では、胸がすくような一打を放ちましたが、驚くべきは直後の大盛穂のセンター前ヒットです。意地を感じました。
ここしばらくは、二人のポジション争いが続きます。楽しみです。